株式投資の利益というと、売買によって差益を得る「キャピタルゲイン」と配当などによる「インカムゲイン」が基本ですが、「貸株」というのをご存知でしょうか。
貸株は、文字通り株を貸し出すことによって利益を得ることができるサービスです。利益は少ないですが、ほとんどデメリットやリスクはありません。
そのため、ただ株式を保有しているだけでは、もったいないです。今回はお得なサービスである貸株について、メリット・デメリット、貸株の始め方などをご紹介したいと思います。
<貸株をおすすめの人>
・現物株式取引をしている人
・キャピタルゲインや配当金以外にも収益が欲しい人
・長期保有や塩漬けしている株式を有効活用したい人
貸株とは

貸株は、自分が持っている個別株やETF、REITなどを証券会社に貸出し、証券会社から機関投資家に貸し出されます。そこで得た金利(貸株料)を、貸した株式に応じて受取ることができるサービスです。
投資家は、長期保有している株式を貸し出すことで、塩漬けしている株式を有効活用することができ、証券会社や市場から見ると、眠っている株式を動かすことができるので、株式の流動性が向上するため、双方にメリットがあります。
貸株のメリット

- 金利を受け取れる
- 貸出期間は決まっていない(いつでも売却できる)
- 株主優待や配当金も受取れる
- 信用取引口座でも貸株できる
金利を受け取れる
貸株をする最大のメリットは、金利を受け取れることです。貸株の金利は、証券会社や銘柄によって異なります。多くの銘柄は、年利0.1~0.2%程度ですが、中には年利10%を超える銘柄もあります。
たとえば、100万円分の株式を年利0.1%で貸し出した場合、年間の利益は1,000円です。
年利0.1%では大した金額にはならないと思うかもしれませんが、銀行預金よりも金利は高く、株を長期保有して眠らせているだけなら、貸株で1円でも多く稼いだほうがお得です。

貸出しされた日数に応じて貸株料がもらえるよ
一般的に、値動きの大きい新興市場銘柄のほうが貸株金利が高くなる傾向にありますが、貸株金利の高い銘柄は、値動きも大きく、株価も値下がり傾向にあることが多いです。
どれだけ貸株金利が高くても、株価が下落しては意味がありません。貸株金利の高さだけに目を奪われて銘柄を選ぶと、貸株料以上に損失を被る可能性があるので気をつけましょう。
各証券会社の貸株金利は、毎週更新されます。
貸出期間は決まっていない(いつでも売却できる)
銀行の定期預金などは、あらかじめ預入期間を決めて預入れをします(最短1ヵ月~10年など)。預け入れたお金は、原則として満期を迎えるまでは引き出すことはできません。
しかし、貸株には貸出期間の制限はありません。
株を貸出している間でも、貸株の解約手続きなどは一切なく、通常の株式売却と同じように売却することができます。
長期にわたって貸株するほど受け取れる貸株料は多くなるので、配当や株主優待狙いで長期保有している人、塩漬け株を持ち続けている人にとっては、貸株は大きなメリットになります。
また、貸株料は日割りで計算されるので、たとえ1日しか貸株をしなくても、貸株料を受け取ることができます。
株主優待や配当金も受取れる
株の貸出し期間中は、所有者は証券会社or株を借りている投資家になるので、優待の権利確定日に貸出したままにしておくと、株主優待を受けることができません。
しかし、株主優待の権利確定日前に貸株を解除したり、株主優待優先設定(株主優待があれば、権利確定日前に貸株を自動解除してくれる設定)をすることによって、株主優待や配当金を受取ることが可能です。
信用取引口座でも貸株できる
多くの証券会社では、信用取引口座でも貸株サービスを利用することができます。
そのため、代用有価証券になっているものや余剰株式も、貸株サービスで有効活用することが可能です。
貸株のデメリット

貸株のメリットは大きいですが、デメリットもあります。
- 税区分が雑所得になる
- 証券会社が倒産すると返還されないリスクがある
- 単元未満株やNISA枠の株は対象外
税区分が雑所得になる
貸株で受け取る金利や配当金相当額は「雑所得」となり、原則として確定申告が必要になります(給与所得以外の所得が20万円以下の場合など、一定の要件を満たす場合は不要)。
そのため、「配当金控除の対象外」「株式等の譲渡損と損益通算できない」「申告分離課税ではなく総合課税の対象になる」というデメリットがあります。
給与所得額などによっては、通常の配当金よりも多く課税されてしまうこともあります。
証券会社が倒産すると返還されないリスクがある
証券会社は、法令によって、顧客の資産と自己資産を分けて管理されています(分別管理)。
そのため、証券会社が倒産した場合でも、顧客の資産は確実に返還されますが、貸株は保護対象外となっています。返還請求をすることは可能ですが、必ず返ってくるとは限りません。
大手証券会社であれば、突然倒産してしまうリスクは低いと思いますが、このようなリスクがあるということを知っておきましょう。
単元未満株やNISA枠の株は対象外
単元未満株やNISA枠(つみたてNISA/ジュニアNISAを含む)で購入している株は、貸株の対象外です。
この他にも、外国株式やETN(指標連動証券)など、貸株の対象外となっている銘柄もありますので、各証券会社で確認してください。
貸株のコース設定

証券会社によっても異なりますが、基本的にはいくつかのコースの中から設定を選ぶことができます。
- 貸株金利優先
- 株主優待優先
- 権利取得優先
- 一部だけ貸し出ししない
貸株金利優先
貸株金利優先は、権利確定日でも、貸株金利を受け取り続けることができる設定です。
金利が優先されるため、株主優待を受けることはできません。配当金は、配当金相当額として支払われます。証券会社によっては、株主優待などの権利を放棄する代わりに、権利確定日の金利を割り増ししてくれることもあります。
権利確定日も貸株料が発生するので、受け取れる貸株料は3つの設定の中で最も多くなります。
株主優待優先
株主優待を優先する設定を行うと、権利確定日前に貸株を自動で解除して、株主優待を受け取ることができるようになります。
さらに、権利確定日前に手元に戻るので、株主優待と配当の権利確定日が同じ場合には、配当金も通常通り受け取ることができます。
株主優待がない銘柄については、自動で解除されませんので、配当金ではなく配当金相当額が支払われることになります。
配当金と配当金相当額の違い
配当の権利確定日に貸株をしていた場合、配当金の代わりに配当金相当額を受け取ることができます。配当金と配当金相当額は同じように見えますが、税金の扱いが異なります。
貸株料や配当相当額は「雑所得」となり、他の所得と合算のうえ、総合課税の対象となります。配当金は「配当所得」として配当控除が受けられ、損益通算ができます。
※配当金相当額で支払われる金額は、所得税が源泉徴収された配当金の額と同額となります。
権利取得優先
権利取得優先は、株主優待の有無に関わらず、すべての権利確定日前に貸株を解除する設定です。この場合、株主優待や配当金、株主総会での議決権など、株主としてのすべての権利を受けることができます。
※権利取得優先ついては、利用できない証券会社もあります。

株主優待設定は貸株サービスのあるすべての証券会社で利用できるけど、権利取得設定があるはマネックス証券、松井証券、楽天証券のみだよ。
一部だけ貸し出ししない
コースを設定する際には、株主優待の取得条件を確認しておくことが大切です。
たとえば、3年以上継続保有すると受け取れる株主優待が5割増しなど、長期継続保有優遇制度があります。
そのような場合に貸株をすると、その間は株の名義が貸出先に移ってしまうので、株主優待優先の設定で権利確定日だけ貸株を解除しても、長期継続保有とは認められません。
長期継続保有の優遇を受けるのであれば、「その銘柄(株主優待を受けるのに必要な株数)のみを貸出ししない」という設定をしましょう。
※一部だけ貸し出しをしないという設定ができないことがありますので、証券会社の公式サイトなどでご確認ください。
貸株の始め方

貸株の申し込み方法は、とっても簡単です。基本的には、証券会社の公式サイトから貸株サービスの設定を決めて、申し込み手続きをするだけです。
最初に「配当金自動取得サービス」や「株主優待設定」を設定しておくと、従来どおりに株を売買するだけで金利を受取ることができるので、面倒な手続きは必要ありません。
マネックス証券の場合、「公式サイトにログイン→貸株サービス→お申込み方法」で手続きできます。
※貸株サービスは、証券会社で口座開設していないと利用できません。
まだ口座を保有していない方は、マネックス証券公式サイトから無料で口座開設できます。
申込みの手順(マネックス証券)
STEP1:契約内容及び取引ルールの確認
申込みの前に、「貸株サービス(株券貸借取引)に必要な各種書類の電磁的方法による提供についてのご説明」を確認して、電磁的方法による提供及び貸株サービスの申込を承諾します。
そして「株券貸借取引に関する基本契約書」「株券貸借取引に関する基本契約書に係る合意書」「利用ルール・ご注意」を読んで、内容とリスクを把握しておきましょう。
STEP2:申込み
ウェブサイトの「貸株サービス申込書 兼 無担保確認書」に記載されている内容を確認して、申込みをします。
「配当金自動取得サービス・株主優待設定設定」画面が表示されるので、貸株金利優先 or 株主優待優先などを選択します。
※当日分の申込は、営業日の26:00までです。
26:00を過ぎた場合は、翌営業日が「契約・申込日」となります。
STEP3:利用開始
申込みした日の翌営業日から、貸株サービスがスタートします。
実際に貸株金利(貸借料)が付与されるのは、申込日の4営業日目からです。
<マネックス証券の貸株サービスの特徴>
- 金利5%超(年率)の高金利銘柄が多い
- 権利確定日に自動的に貸株を解除する設定が可能(株主優待・配当金自動取得)
- 代用有価証券も貸出可能
- 新しく買った株は自動的に貸出、売却時は自動的に解除されるので面倒な手続きは不要
- マネックス証券のすべての株式が対象(NISAで保有している銘柄や一部の非対象銘柄を除く)
- 銘柄・株数を選んで貸し出すことが可能
貸株とは【まとめ】
貸株は、自分の持っている株式やETFを有効活用して、貸株金利を得ることができるサービスです。
金利は年利0.1~0.2%程度なので、決して高いとは言えませんが、大きなデメリットやリスクもなく、何の手間もかからずに利益を増やすことができるので、おすすめです。
ただし、貸株はあくまで「おまけ」なので、貸株をメインに証券会社や銘柄を選ばないでください。
証券会社を選ぶ際は、国内株や外国株、投資信託、ETFなど投資目的に合った証券会社を選び、保有する銘柄は、あくまでも値上がり期待や配当・株主優待狙いといった投資方針で選んでください。
その上で「貸株金利が高かったらラッキー」くらいの意識で貸株サービスを利用しましょう。