債権の種類は、何を基準にするのかによって異なります。
どこが発行しているのか、発行から償還までの期間はどれくらいか、利子がどのように支払われるのか、何の通貨建てなのかなど、さまざまな種類があります。
今回は、債権の種類についてご紹介します。
債権の種類
債権の種類分けをする際には、何を基準にするのかによって異なります。
償還期限による分類
償還期限が1年以内の期間の債券は、短期債と言い、償還期限が1年~5年のものを中期債、5年~10年のものを長期債、10年を超えるものを超長期債と言います。
償還期限が無い債権もあり、これを永久債(コンソル債)と言います。
発行体による分類
国が発行するのが国債、地方公共団体が発行するのが地方債、そのほか、政府出資の特殊会社などの政府関係機関が発行する財投機関債や政府保証債などがあります。これらは、まとめて公共債と呼ばれています。
公的機関ではない、民間企業が発行する債券は民間債と呼ばれ、株式会社が発行する社債や、特定の銀行・金庫が発行する金融債などがあります。社債は、事業会社が発行する債券なので、事業債と呼ばれます。
社債については、昔は転換社債と呼ばれた転換社債型新株予約権付社債、ワラント債と呼ばれた新株予約権付社債などがあります。
また、外国政府や法人が発行する債券が外国債で、外国債のことを外債といいます。外債のうち、国際機関・外国の政府や民間企業が、日本国内で発行する円建て債券を円建て外債といい、市場ではサムライ債といいます。
日本の企業などが、国外で発行する円貨表示の債券も、円建て外債といい、円建て外債は利払い・償還とも円建てで行われるので、為替変動リスクはありません。
これに対して、米ドルなどの外貨建てで、外国政府や法人もしくは国内法人が、国外で発行する債券を外貨建て外債といいます。
払い込み・利払い・償還すべて外貨建てで行われるので、為替変動リスクがあります。
形態による分類
発行形態に分類すると、不特定多数の一般投資家に募集を行う公募債、発行する債券を特定少数の投資家が引き受ける私募債があり、私募債の一部に、債権の発行者と特定の関係にある投資家だけが購入できる縁故債があります。
担保による分類
担保付きの債券としては、一般担保債、物上担保債があり、担保がない債権を無担保債と呼びます。
償還条件による分類
繰上げ償還が可能なコーラブル債、繰り上げ償還条項のないノンコーラブル債があります。コーラブル債としては、金融機関などが発行する劣後債などがあります。
このほかに、デリバティブと絡めた仕組み債といわれる債権もあります。
国債の種類
国債の根拠法
国債には、発行するための根拠法が存在します。その発行根拠法をもとに、国債が分類されています。
国が、税収などの収入で、支出が賄いきれないときに国債を発行しますが、これが新規財源債、新規国債と呼ばれる国債で、建設国債(四条国債)と赤字国債(特殊国債)を合わせたものになります。
新規財源債のうち、財政法を発行根拠法としているのが、建設国債で、財政法の4条に記載されているので、四条国債ともいわれています。
赤字国債は、発行されるたびに特別法を制定し、特例によって発行されるので、特別国債ともいわれています。
また、国債の整理または償還のために発行される国債は、借換債と呼ばれます。
2001年度からは、財政融資資金特別会計法を発行根拠法とした財政融資資金特別会計国債(財投債)が新たに発行され、東日本大震災からの復興のために、復興債が発行されています。
年限別・国債の種類
最も期間の短い国債はTBと言われる割引短期国債で、割引方式で発行されています。2009年2月より、割引短期国庫債券は政府短期証券とともに、国庫短期証券として、統合発行されています。
このほか、個人向け専用の国債として、個人向け国債も発行されています。
利付国債は、発行されるときに決められた利率が、償還まで変わらずに支払われるため、確定利付とも呼ばれます。割引方式の国債も、償還まで待てば利回りは確定します。
地方債・政府保証債の種類
地方債
公募地方債は、総務省が定めた都道府県と政令指定都市しか発行することができませんが、ミニ公募地方債の発行が可能になり、原則として、すべての自治体で発行することができます。
原則は建設地方債ですが、特例法により、一定量の赤字国債や特例債も発行されています。
会計別では、地方行政機関の財政部門が、一般会計制度にしたがって発行する普通会計債と、水道事業、交通事業などの地方公営企業が発行する公営企業債があります。
引受機関別には、公募債と銀行等引受債があり、公募債は市場公募地方債と住民参加型市場公募地方債に分けられます。
銀行等引受債の発行形態は、証書借入または証券発行の2種類の形式ですが、公募債は証券形態のみで発行されています。
政府保証債
政府関係機関が発行するのが政府関係機関債で、元本および利子の支払いを、政府が保証しているのが政府保証債です。
また、財政投融資改革により、政府関係機関は自主的な資金調達が必要になったため、政府保証のない政府関係機関の債権が発行されるようになりました。これを財投機関債といいます。
財投機関債とは、独力で資金調達できる法人が発行する政府保証がない債券です。
そして、国債でもある財投債とは、財投機関債、政府保証債のいずれでも資金調達が困難な場合に、財務省が発行する国債です。
社債の種類
社債は、事業会社が設備投資や運転資金などを調達するために発行する債券で、確定利子の支払いがあり、償還があるなど、債権の基本的な特徴を持ったものを普通社債(SB)と呼びます。
普通社債の償還期限や利率は、発行会社の信用力や金利情勢などによって異なります。
さらに、毎年決まった時期に数回利子が支払われる固定利付債、利子の支払いがなく額面以下の価額で発行され、額面金額の差額が実質的な利子に相当する割引債、一定の法則にしたがって支払われる利子が変動する変動利付債などがあります。
また、普通社債に対して劣後債と呼ばれる社債があります。
これは、一般の社債よりも、債務弁済の順位が劣る社債のことで、会社が倒産などした場合、一般の債権者への支払いをすべて終えた後に、支払いが可能であれば、利払いや償還が行われる債券です。
以前、転換社債と呼ばれていた、株式に転換できる社債は、非分離型の新株引受権付社債(ワラント債)と合わせて新株予約券付社債と呼ばれるようになりました。
この他にも、仕組み債もしくはスキーム債と呼ばれる社債や、海外で発行されるものや個人向けの社債もあります。
外債の種類
海外で発行される債権を外債といいます。外債は、外国の政府や地方公共団体、国際機関などが発行する公共債から、民間企業が発行する社債まで、外債にもさまざまな種類があります。
また、利子の支払いや償還金の支払いなどが、どこの通貨で行われるのかに応じて、円貨建て、外貨建て、二重通貨建てに分類されます。
国内で、海外の発行者が発行する債券には、円建てで発行される円建て外債(サムライ債)とユーロ円債と外貨建て外債(ショーグン債)の3種類があります。
サムライ債
円建て外債は、国際機関や外国の政府や法人が、日本国内で発行する円貨建ての債券で、円建て外債やサムライ債と呼ばれます。原則、為替変動リスクはありません。
ユーロ円債
日本国外で発行される円建ての債券には、ユーロ円債と呼ばれるものがあります。原則、元利払いがすべて円貨で行われ、為替変動リスクはありません。
ユーロ円債は、発行体が海外の発行体に限らず、海外市場(ユーロ市場)で発行されるので、債権の受け渡しや保管が、海外の決済機関によって行われます。
ショーグン債
海外の発行体が外貨建てで、日本国内で発行する外貨建て外債という債権もあり、ショーグン債ともいいます。購入時に比べて、円安になると為替差益が生じますが、円高になると為替差損が生じます。
デュアル・カレンシー債
二重通貨債は、利払いと償還が、異なる通貨で行われる債権です。このうち、払い込みと利払いを円建て、償還を外貨建てで行うものをデュアル・カレンシー債と言います。
払い込みと償還が円貨建て、利払いが外貨建てで行われるものはリバース・ディアル・カレンシー債(逆二重通貨債)といいます。
利払い方式では、固定利付債や変動金利債がありますが、割引債と同様のゼロクーポン債と呼ばれるものがあります。これは、利子がない代わりに、額面に対して一定率が割り引かれた価格で発行され、額面金額で償還されます。
さらに、ディープ・ディスカウント債と呼ばれるものは、払い込み価格が額面より低い分、利率は利付債に比べて低く設定されていて、利子と償還差益の両方が得られます。
米国債
世界の国債市場の中でも、最も影響力が大きいのが米国の国債市場です。米国債はトレジャリーと呼ばれ、この動向は各国の金融市場にも大きな影響を与えています。
米国債の中で指標(ベンチマーク)となっているのが、10年債で、米国債の種類は市場性国債と非市場性国債に分けられます。
市場性国債とは、一般の投資家を対象に、売買が自由にできるものです。
非市場性国債には、米国の個人向け国債である貯蓄国債と、米財務省が政府管轄の政府機関や信託基金、特別会計に対して直接発行されるものがあります。