日経225オプション取引の4つの基本型を組み合わせると、さまざまな合成ポジションをつくることができます。
合成ポジションによって、投資家自身のスタンスや、相場の状況に合った売買戦略を立てられることがオプション取引の魅力であり、醍醐味です。
今回は、11種類の代表的な戦略をご紹介します。
ロング・ストラドル
ロングストラドルは、同じ限月で同じ権利行使価格のコールオプションとプットオプション同時に買うという戦略です。
一般的に、権利行使価格はアット・ザ・マネーを選択します。ロングは買い、ショートは売りです。
この戦略は、日経平均株価が上下どちらかに大きく変動することを予想して仕掛けます。SQが購入した権利行使価格から大きく乖離すればするほど利益が増え、SQが権利行使価格付近で最大損失になります。
仕掛けるときは、コールとプットを同時に買い、そのタイミングはボラティリティが極小値をつくり、今後ボラティリティが上昇すると予想する時です。
最大損失は、購入時のプレミアム代金に限定されますが、アット・ザ・マネーのオプションを2枚購入することになるので、支払うプレミアム代金は高くなります。
ロングストラドル
- ポジション / コールの買い+プットの買い 同一限月 同一権利行使価格
- 狙い目 / ボラティリティが上昇すると予想、日経平均株価が上昇or下落どちらかに大きく変動すると予想
- 最大利益 / 理論上は無限大
- 最大損失 / コールとプットのプレミアム代金に限定
- メリット / 損益分岐点が近いので、利益になる確率が高い
- デメリット / 他の合成ポジションと比較して、支払いプレミアムが大きい
ロング・ストラングル
ロングストラングルは、同じ限月で権利行使価格の違うアウト・オブ・ザ・マネーのコールとプットを買う戦略です。
ロングストラドルと同様、日経平均株価が上下どちらかに大きく変動することを予想して仕掛けます。
アット・ザ・マネーから大きく乖離した権利行使価格を選択すると、より安いプレミアムで組むことができますが、利益になる確率が低くなります。
損益については、SQが購入した権利行使価格から大きく乖離するほど利益は増え、SQが購入した権利行使価格の間で最大損失になります。
仕掛ける場合は、コールとプットを同時に買い、そのタイミングはボラティリティが極小値をつくり、今後ボラティリティが上昇すると予想するときです。
ロングストラドルとよりも購入時のプレミアム代金は安いですが、損益分岐点がアット・ザ・マネーから離れるため、利益になるには、日経平均株価の、より大幅な変動が必要です。
ロングストラングル
- ポジション / アウト・オブ・ザ・マネーのコール買い+プットの買い 同一限月
- 狙い目 / ボラティリティが上昇すると予想 日経平均株価が上昇or下落どちらかに大きく変動すると予想
- 最大利益 / 理論上は無限大
- 最大損失 / コールとプットの購入プレミアム代金に限定
- メリット / 権利行使価格をアウト・オブ・ザ・マネーに設定することで、ロングストラドルに比べて最大損失のプレミアム代金が軽減
- デメリット / 利益になるには、より大きな日経平均株価の変動が必要
ショート・ストラドル
ショートストラドルは、同じ限月で、同じ権利行使価格の、コールとプットを同時に売る戦略です。
一般的に、権利行使価格は、アット・ザ・マネーを選択します。ロングストラドルが買い戦略で、ショートストラドルが売戦略になります。
この戦略は、日経平均株価が大きく変動することなく、権利行使価格付近でもち合うことを予想して仕掛けます。
SQが、権利行使価格付近で利益が最大になり、権利行使価格付近から大きく乖離するほど損失が増加します。
仕掛けるタイミングは、同時にコールとプットを売り、ボラティリティが極大値をつくり、今後ボラティリティが下落すると予想するときです。
最大利益は、受け取りプレミアム代金に限定されますが、タイム・ディケイ(時間的価値の減少)の恩恵にあずかれます。
多くの場合、最大利益を得ることはできないので、いかに利益を減らさずに利食いするかがポイントになります。
ショートストラドル
- ポジション / コールの売り+プットの売り 同一限月 同一権利行使価格
- 狙い目 / ボラティリティが減少すると予想 日経平均株価が権利行使価格の近辺でもち合うと予想
- 最大利益 / コールとプットの売りつけプレミアム代金
- 最大損失 / 理論上は無限大
- メリット / オプションの売りだけでの利益は、他の合成ポジションより多い
- デメリット / 損益分岐点が権利行使価格から近いので、損失になる確率が高い
ショート・ストラングル
ショートストラングルは、同じ限月で権利行使価格の違うアウト・オブ・ザ・マネーのコールとプットを同時に売る戦略です。
日経平均株価が大きく変動することなく、権利行使価格付近でもち合うことを予想して仕掛けます。
権利行使価格が、アット・ザ・マネーから離れるほど、利益になる確率は上がりますが、最大利益は減少していきます。SQが売りつけた権利行使価格から大きく離れるほど損失は増えます。
仕掛ける場合は、コールとプットを同時に売り、そのタイミングはボラティリティが極大値をつくり、今後ボラティリティが下落すると予想する時です。
最大利益は、受取りプレミアム代金に限定されますが、タイム・ディケイの恩恵にあずかれます。
ショートストラドルと比べて、最大利益になる確率は高いですが、最大利益が減少してしまいます。
損益分岐点近くに日経平均株価が変動した場合、先物でヘッジすることも可能です。
ショートストラングル
- ポジション / アウト・オブ・ザ・マネーのコールの売り+プットの売り 同一限月
- 狙い目 / ボラティリティが減少すると予想 日経平均株価が権利行使価格の近辺でもち合うと予想
- 最大利益 / コールとプットの売りつけプレミアム代金
- 最大損失 / 理論上は無限大
- メリット / タイム・ディケイの恩恵にあずかれる ショートストラドルよりも利益になる確率が大きい
- デメリット / ショートストラドルよりも最大利益が小さい
レシオ・コール・スプレッド
レシオコールスプレッドは、アウト・オブ・ザ・マネーのオプションを買うと同時に、アウト・オブ・ザ・マネーのオプションを複数枚売って、受け取るプレミアムの方が大きいポジションをとるという手法です。
レシオコールスプレッドでは、アウト・オブ・ザ・マネーのコールオプションを1枚購入し、購入したオプションの同限月でさらにアウト・オブ・ザ・マネーのコールオプションを複数枚売りつけます。
タイミングは、相場がやや上昇または横ばいと予想する時です。特に、日経平均株価が急上昇した後に仕掛けるのが最適です。
SQが一定価格以上にならなければ、利益になりますが、買いの権利行使価格以下だと「売却プレミアム-購入プレミアム」しか儲かりません。
勝率が高いというよりも、負けにくい戦略です。
レシオコールスプレッド
- ポジション / アウト・オブ・ザ・マネーのコールオプションを1枚購入し、購入したオプションの同限月でさらにアウト・オブ・ザ・マネーのコールオプションを複数枚売りつける
- 狙い目 / 相場がやや上昇or横ばいの予想
- 最大利益 / SQが売りポジションの権利行使価格のとき「買いポジションの権利行使による利益-買いプレミアム+売りポジションの受け取りプレミアム」が最大利益
- 最大損失 / 無限大
- メリット / アウト・オブ・ザ・マネーのオプションを売っているので、タイム・ディケイの恩恵を受けやすく、利益になる確率が高い 売りのみよりも必要証拠金が少ない
- デメリット / SQが買いポジションの権利行使価格に届かない場合、利益が少ない
レシオ・プット・スプレッド
レシオプットスプレッドは、アウト・オブ・ザ・マネーのプットオプションを複数枚売りつけます。コールの場合と同様に、購入プレミアムより売却プレミアムのほうを大きくし、その差額(スプレッド)を確保します。
仕掛けるタイミングは、相場がやや下落or横ばい予想のときです。コールのときよりもリスクが高くなります。
SQが一定価格以下にならなければ、利益になりますが、買いの権利行使価格以上だと「売却プレミアム-購入プレミアム」しか儲かりません。
レシオプットスプレッド
- ポジション / アウト・オブ・ザ・マネーのプットオプションを1枚購入し、購入したオプションの限月でさらにアウト・オブ・ザ・マネーのプットオプションを複数枚売りつける
- 狙い目 / 相場がやや下落or横ばい予想
- 最大利益 / SQが売りポジションの権利行使価格のとき「買いポジションの権利行使による利益-買いプレミアム+売りポジションの受け取りプレミアム」が最大利益
- 最大損失 / 無限大
- メリット / アウト・オブ・ザ・マネーのオプションを売っているので、タイム・ディケイの恩恵を受けやすく、利益になる確率が高い 売のみよりも必要証拠金が少ない
- デメリット / SQが買いポジションの権利行使価格以上だと、利益が少ない
クレジット・コール・スプレッド
クレジットコールスプレッドは、アウト・オブ・ザ・マネーのオプションの買いにより、オプションの売りのリスクを抑えて利益を狙う戦略です。売りが主軸で、買いがヘッジ(保険)です。
相場が横ばいもしくは下落すると予想する場合にコールを売り、さらにアウト・オブ・ザ・マネーのコールを買います。
クレジットスプレッドは、売のみの戦略に比べて、損失が限定されているので、最適な戦略といえます。
ただし、予想と反対に相場が動いたときには損失になります。
また、アウト・オブ・ザ・マネーのオプションはタイム・ディケイの影響を受けやすいので、ヘッジのために購入しているオプションのプレミアムは減少しやすくなります。
クレジットコールスプレッド
- ポジション / 相場が横ばいor下落予想の場合、コールを売り、アウト・オブ・ザ・マネーのコールを買う
- 狙い目 / ボラティリティが高く、相場が横ばいor下落しそうなとき
- 最大利益 / オプションの受け取りプレミアムと支払いプレミアムの差額
- 最大損失 / 権利行使価格の差額-当初プレミアムの差額に限定
- メリット / 売のみに比べて、リスクが限定される
- デメリット / 相場が予想と反対に動くと損失になりやすい
クレジット・プット・スプレッド
クレジットプットスプレッドは、アウト・オブ・ザ・マネーのプットオプションの買いにより、プットオプションの売りのリスクを抑えて利益を狙う戦略です。
仕掛けるタイミングは、相場が横ばいor上昇すると予想するときです。
オプションの売りは、損失無限大ですが、クレジットプットスプレッドで保険を掛けるのも1つの方法です。
クレジットプットスプレッド
- ポジション / 相場が横ばいor上昇を予想する場合、プットを売り、アウト・オブ・ザ・マネーのプットを買う
- 狙い目 / ボラティリティが高く、相場が横ばいor上昇しそうなとき
- 最大利益 / オプションの受け取りプレミアムと支払いプレミアムの差額
- 最大損失 / 権利行使価格の差額-当初プレミアムの差額に限定
- メリット / 売のみに比べて、リスクが限定される
- デメリット / 相場が予想と反対に動くと損失になりやすい
デビット・コール・スプレッド
デビッドコールスプレッドは、アウト・オブ・ザ・マネーのオプションを売ることにより、オプションの購入プレミアムを低減し、利益を狙う戦略です。
デビッドスプレッドは、オプションの買いが主軸となる、クレジットスプレッドの買いと売りが逆になった戦略です。
相場の上昇を予想する場合、コールを買い、さらにアウト・オブ・ザ・マネーのコールを同量だけ売ります。
デビッドスプレッドでは、アウト・オブ・ザ・マネーのオプションを売ることにより、最大損失を減らすことができます。
さらに、アウト・オブ・ザ・マネーのオプションのほうがタイム・ディケイの恩恵を受けやすいので、利益になる確率も高くなります。
デメリットとしては、オプションの買い手の特徴である利益無限大が利益限定になってしまうことです。1回で大きく利益を得るチャンスをなくしてしまいます。
デビッドコールスプレッド
- ポジション / 相場上昇を予想する場合、コールを買い、アット・ザ・マネーのコールを売る
- 狙い目 / ボラティリティが高く、相場が上昇しそうなとき
- 最大利益 / 権利行使価格の差額-当初プレミアムの差額に限定
- 最大損失 / オプションの支払いプレミアムと受け取りプレミアムの差額
- メリット / 相場が予想通りに動くと利益になりやすい リスクが限定され、確率の低いオプションの買い手の損失額を減らすことができる
- デメリット / 買いのみに比べて、利益が限定されてしまう
デビッド・プット・スプレッド
デビッドプットスプレッドは、プットオプションを買うときに、よりアウト・オブ・ザ・マネーのプットオプションを同量だけ売ることで、予想が外れた場合のリスクを限定する手法です。
仕掛けるのは、今後相場が下落すると予想される場合です。
特徴は、デビッドコールスプレッド同じで、買いの勝率の低さを、負けたときの損失を限定することでカバーできる一方で、利益無限大というメリットがなくなります。
デビッドプットスプレッド
- ポジション / 相場の下落を予想する場合、プットを買い、アウト・オブ・ザ・マネーのプットを売る
- 狙い目 / ボラティリティが高く、相場が下落しそうなとき
- 最大利益 / 権利行使価格の差額-当初プレミアムの差額に限定
- 最大損失 / オプションの支払いプレミアムと受け取りプレミアムとの差額
- メリット / 相場が予想通りに動くと利益になりやすい リスクは限定され、勝率の低いオプションの買い手の損失額を減らすことができる
- デメリット / 買いのみに比べて、利益が限定されてしまう
カレンダー・スプレッド
カレンダースプレッドは、同一権利行使価格で期近の限月のコール(プット)を複数枚売り、期先の限月のコール(プット)を1枚買って、タイム・ディケイの差を利用して利益をあげる戦略です。
受取り代金>支払い代金になるように、売りつける期近のオプションの枚数を調整します。
残存日数が少ないオプションのほうが、残存日数が多いオプションより時間的価値の減少率が大きいことを利用して行う取引です。
期近のオプションのプレミアムが高いときに、カレンダースプレッドを仕掛けると、受取り代金のほうが大きくなりやすいです。
複数枚売りつけたオプションのヘッジの役割を、期先の買いつけたオプションが果たします。
これまでの合成ポジションと異なる点は、違う限月のオプションを組み合わせることです。違う限月のオプションを組み合わせるので、これまでの合成ポジションのように、共通の満期日に損益が確定するわけではありません。
期近の売りポジションを待ってもいいのですが、基本的には、期近のプレミアムと期先のプレミアムの変化を監視し、ギャップが大きくなったときに、両者を反対売買をして、利益確定します。
カレンダースプレッド
- ポジション / 同一権利行使価格で期近の限月のコール(プット)を複数枚売り、期先のコール(プット)を1枚買う
- 狙い目 / 期近のオプションのボラティリティが高いとき
- 最大利益 / 反対売買や満期到来で売りポジションがなくなり、買いポジションだけになると無限大
- 最大損失 / 理論上は無限大(多くの場合、買いポジションでカバーできる)
- メリット / タイム・ディケイの恩恵を受けられる 期近の売りオプションがなくなると、次の戦略に移れる
- デメリット / 売のみに比べて、利益が減少する