あなたは、沖縄の民家とどんなイメージがありますか?独特の文化や亜熱帯気候である沖縄の民家は、本土とは異なる部分も多くあります。
今回は、沖縄の民家の特徴についてご紹介します。

伝統的家屋

沖縄の代表的な民家といえば、赤瓦の屋根に平屋の家屋、家の周囲は石垣で囲まれているのが特徴的です。
- 家の周囲は石垣で囲まれている
- 赤瓦の屋根
- ヒンプン
- 玄関がない
- アマハジ(雨端)
- 室内の特徴
- シーサー / 石敢當(いしがんとう)
石垣で囲まれている

沖縄の伝統的な家屋は、石垣で囲まれています。これは、家を建てるときに、地面を掘っていて出てきた珊瑚や石灰岩などを積んでいます。
この塀は、野積みといって、基本的には接着剤などは一切使用せず、ただ積んであるだけです。なので、触ると簡単に崩すことができます。
大丈夫?と思うかもしれませんが、琉球石灰岩は、表面がゴツゴツしていて、しっかりとかみ合っているので、台風などの強風でも崩れることはありません。琉球石灰岩には、無数の穴があいているので、風通しがいいのも特徴です。
また、最近はコンクリートで固めた塀も多くなっています。
石垣塀の内側には、台風対策として、防風林のフクギ(福木)が植えられていることが多いです。
赤瓦の屋根

赤瓦には吸水性があるので、雨などが降ると水分を吸ってくれて、気温が上がると水分を蒸発させます。水分を蒸発させるときには、熱を逃がして涼しくなるので、室内も涼しくなって快適に過ごすことができます。
強い日差しを浴びても、瓦が乾燥しないので、割れにくく、耐久性の高い瓦です。丸い山型の男瓦と平らな女瓦を組み合わせて漆喰で固めているので、台風で飛ばされることもありません。
このときに、残った漆喰でシーサーを作ったことがはじまりといわれています。
ヒンプン

ヒンプンとは、中国の「塀風門(ピンフォンメン)」が由来と言われています。これは、風の直撃を防いだり、目隠しの役目があります。
また、魔物(マジムン)は、真っすぐにしか進むことができないので、ヒンプンがあると魔物はぶつかって家の中に入れないという、魔除けの意味もあります。
母屋の左側には台所があるので、女性はヒンプンの左側から家に入り、男性や客人は右側から入ります。
玄関がない

古い民家には玄関がないので、家主も客人も、縁側から出入りするのが一般的です。
沖縄は、年間平均気温は20℃前後と高く、海からの湿った風が吹きつけるので、湿度は70%もあります。そんな気候でも快適に過ごせるように、各部屋の仕切りがなく、家全体に風が通るように間口が広く取られています。
アマハジ(雨端)

母屋の縁側には、大きく張り出した庇(ひさし)があります。これをアマハジ(雨端)といいます。直射日光や雨が屋内に降り込むのを防いでくれます。
室内の特徴
主に使われる部屋は、一番座、二番座、三番座の3つがあり、一番座は客間、二番座は仏間、三番座は居間(リビング)として使われています。
東から順番に、一番座から並んでいて、祖先崇拝の沖縄では、仏壇のある二番座が家の中心になるように造られ、南を向くように配置されています。
各部屋の後ろには、裏座という部屋があり、主に女性や子供の寝室などに使われています。基本的に、良い方角は男性、悪い方角は女性の生活空間でした(今は違います)。
シーサー / 石敢當(いしがんとう)

沖縄の民家には欠かせないシーサーですが、屋根の上や門の前などさまざまな箇所に置かれています。
屋根の上のシーサーはオスで、家を守ってくれます。
家の中や門の前には、口を開けたオスを右側、口を閉じているメスを左側に置きます。これは、オスが魔物(マジムン)を追い払い、メスは幸福を呼び込んで、幸せを逃さないように口を閉じているといわれています。
また、石敢當(いしがんとう)も、魔除けの石碑です。
魔物は直線にしか進むことができないので、家の前やT字路などに置かれています。石敢當(ヒンプンも同様)に魔物がぶつかり、砕け散ってしまうそうです。
最近では、お土産屋さんなどにも、可愛らしい石敢當が売られています。
沖縄の風水
沖縄は、中国文化の影響を強く受けているため、民家にも風水が取り入れられています。沖縄において家の造りは、その後の人生、子孫にも影響を及ぼすため、方角や位置を見ます。
北風が入らないように南が前方であること、入り口から入った福が溜まるように、屋敷の後方が広い敷地が理想的と言われています。
方角は、太陽が昇る東(あがり)が良く、西(いり)が悪い方位とされています。
鉄筋コンクリート造の家

沖縄の民家のもう一つの特徴は、鉄筋コンクリート造が多いことです。沖縄は戦後、規格住宅が提供されましたが、台風やシロアリの被害が多くありました。
しかし、コンクリート造の米軍住宅は、台風の影響を受けにくいことから、木造からコンクリート造へと変わっていきました。
最近は、木造住宅でも強度が高くなっていますが、やはりコンクリート造のほうが安心感があります。公共施設や商業施設のほとんどは、コンクリート造で建てられています。
- 水タンクがある
- 屋上に柱がある
- 窓に格子がある
- バスタブがない
水タンクがある

沖縄には大きな川がないので、台風が来なかったり、雨が少ないとすぐに水不足になってしまいます。そのため、断水に備えて各建物に水タンクが設置されています。
近年は、ダム開発が進んだこともあり、大きな給水制限は行われていませんが、万一のために、水タンクが設置されています。
屋上に柱がある

建物の屋上に、何本もの柱を見かけることがあります。これは「角出し住宅」といって、将来、増築しやすくするための柱です。
角出し住宅は本土でもあると思いますが、沖縄では見かけることが多いと思います。
窓に格子がある

沖縄の家の窓には格子があるけど、治安が悪いの?と言われたことがあります。
これは、台風対策です。台風の時には、家の前に見たこともないものが飛んできます。
我が家には、台風の時に、網戸のサッシが飛んできたことがあります。格子がなければ、窓ガラスが割れていたかもしれません。ひどい時には車も飛んでいきます。
バスタブがない

沖縄には、バスタブのない住宅がたくさんあります。沖縄は暑い時期が長く、1日に何度もシャワーを浴びることはありますが、湯船につかって体を温めるという習慣がないのです。
広いバスルームにシャワーだけという物件をよく見かけます。
私の友人は、衣装ケースを浴槽に使っていたり、ベビーバスを器用に使っています。友人たちの話では、「お湯も節約できるし、温まるからおすすめ!」だそうです。
1度、衣装ケースの浴槽を使わせてもらいましたが、狭いのでお湯の量は少なくて済むし、思っていたよりも快適でした。
昔は、ホテルなどでも、大浴場がないことがほとんどでしたが、最近は大浴場のあるホテルも増えていますし、温泉もあります。
自然条件を考えた家

沖縄の民家は、気候や台風、間取り、設備などにも考慮された造りになっています。
特に湿気対策、台風対策、日射熱対策は欠かせません。
観光で沖縄に訪れても、民家の中を見る機会は、知り合いがいない限り、ほとんどないと思いますが、中村家、琉球村、沖縄ワールドなどでは、実際に使われていた古民家を見学することができます。
また、古民家の宿もあるので、興味のある方は、ぜひ沖縄の民家で宿泊体験してみてはいかがでしょうか。