債権は、国や企業がお金を調達するための重要な手段で、銀行や生命保険会社にとって、重要な役割を持っています。
具体的にはどんなもので、債券市場とはどんなところなのか、わかりやすく解説します。
債券とは?
債券とは、国や企業などが、不特定多数の人から巨額の資金を借りるときに出す借用証書です。
債権は、もともと紙で印刷された証券で、証券一枚毎に額面金額が印刷され、事前に決められた償還時には、その金額が返済されることを意味しています。
債権の紙自体に財産価値があり、これを有価証券といい、この借用証書を出すことを、「債権を発行する」といいますが、最近は、ペーパーレスとなっています。
個人向け国債の最低額面単位は1万円ですが、個人向け国債以外の国債の最低額面は5万円となっています。小口に分けることで、不特定多数の人から巨額の借り入れを行うことができます。
債権の役割
債権の中でも国債は、国の信用のもとに発行されているので、お札と同様の信用価値がありますが、償還まで持つことで、額面金額が保証されるという時間的な制約があります。
その制約の見返りとして、利息を受け取ることができます。
債権は、国や地方公共団体、企業、外国の政府や企業などが、一般の投資家からまとまった資金を調達することを目的として発行されるものです。債権を発行する側からみると借金になります。
債権を購入する側は、金融商品として、資金の運用手段の1つとして考えています。さらに、投資家が債券を購入する際には、利回りを目安にします。
利回りは、債権の期間により異なりますが、発行体の信用力によっても異なりますし、経済や物価動向によって大きく動きます。
10年国債の利回りが、長期金利として、金利の一つの目安になります。
金融市場での債券の役割
債権は、金融市場の中にあり、債券市場は、発行市場と流通市場に分けられます。発行市場とは、新たに債券が発行される市場で、流通市場は、すでに発行された債券(既発債)を売買する市場です。
債権は、他人に譲渡することが可能です。譲渡することによって、償還日前に現金化することができますし、もちろん、償還日まで保有すれば、額面の金額を受け取ることができます。
債権は、金融商品の中でも、安全性・収益性・流動性の3つに優れた資産です。債権の安全性については、発行者が国や地方、政府関係機関、銀行や大手企業などが多いことで、比較的安全な投資対象といえます。
また、償還日には、額面の金額が支払われ、毎年決められた利子を受け取ることができるなど、収益性にも優れています。
公共債と社債
債権は、公社債とも言われますが、これは、公共債と社債を合わせた呼び方です。
公共債とは、国や地方公共団体および政府機関などの公的機関が発行する債券です。社債は、民間の株式会社などが発行する債券を言います。
債権の中で、最も発行量が多いのが国債です。国債を中心に、債権の売買が行われているのが、債権の流通市場です。
国債などの取引は売買金額が巨額で、国債の1回あたりの発行量が、多いもので2兆円規模となっています。
債権の基本
債権の重要な要素として、償還期限(満期償還日)、利率、額面金額の3つがあります。
債権を発行する国や企業などは、債権の購入者から、必要な資金を借り受けるかたちになります。 発行者から見て、資金をいつまで借り入れるのかを示しているのが償還期限(満期償還日)です。
購入者から見ると、資金をどの程度の間運用できるかという運用期間を示します。
債権は、発行する際に1年、2年、5年、10年、20年と、償還期限が決められています。期間に応じて5年債や10年債などと呼ばれます。
ただし、既発債と呼ばれる、すでに発行された債券に関しては、償還期限までの期間が短くなります。既発債を購入した場合、購入日から償還期限までの期間を残存期間といいます。
そして、債権の購入者にとっては、資金を運用することが目的なので、最も重視するのが利益です。その利益のひとつが、債権の利子(クーポン)もしくは利率(クーポンレート)です。利率とは、額面金額に対する年あたりの利子の割合のことです。
さらに、債権は有価証券であり、価格が存在します。
債権の価格
日本の債券市場では、慣行として、債権の価格を表示する際に、100円をベースにしています。債権は、償還時に額面金額が返ってきます。その額面を100円に置き換えて、期間途中での価格を算出します。
99円であれば、債券価格が下落していることになり、101円であれば、額面金額を上回っていることになります。
債権は新発債でも、それぞれ発行される際の価格が、事前に決められています。これは100円とは限らず、発行価格が99円であれば、償還は100円となるので、1円の利益が発生します。
これはキャピタルゲインと呼ばれる利益で、利子の収入であるインカムゲインと区別されています。
投資家にとっての利益は、両方を合わせたもので、これを年あたりに計算したものを利回りといいます(新発債の場合は、応募者利回りといいます)。
債権と預貯金・株との違い
預貯金と債券
預貯金は、利便性がありますが、預金の金利については、債券市場の同年限の実勢金利に比べるとかなり低めに設定されています。途中で定期預金を解約した場合は、利子が低くなりますが、元本はそのまま返ってきます。
安全性に関しては、預金保証制度によって、1つの銀行口座で1千万円まで保証されますが、それを超えた分に関しては、銀行が破綻などした場合でも保証されません。
これに対して債権は、半年ごとに利子が支払われるなど、預貯金に近い性質であるものの、利便性はありません。利子に関しては、預貯金金利よりは比較的高めになっています。
さらに大きな違いは、債権は有価証券なので、途中で換金する場合、状況によっては額面金額を下回ることがあります。債権の購入に関しての限度額はありません。
そして、債権には信用リスクがあります。発行している国や企業が破綻した場合には、利子が支払われなかったり、元本が毀損する恐れがあります。 海外では、アルゼンチンやロシアの国債がデフォルト(債務不履行)した例があります。
株と債券
株式にも、債権の利子のような配当があります。しかし、株式には償還期限が存在しません。換金するには、市場などで売却しなければならず、売却額によって利益や損失が発生します。
債権も、償還期限を迎える前に売却すると、利益や損失が発生しますが、償還まで待てば、額面金額は戻ってきます。
債権は、お金を借りるという意味では株式と同じですが、あらかじめ利率や償還日などが決められて発行されている点が、株式と異なります。
株式の場合には、お金を貸すというよりも、その会社に投資をするという認識が強いと思いますが、債権の場合は、投資するというよりも、お金を貸すとか預けるという認識が強いように思います。