暗号資産(仮想通貨)の代表的な通貨といえばビットコイン(BTC)ですが、ビットコインキャッシュ(BCH)やビットコインゴールド(BTG)など、ビットコインという名前がついた通貨が複数あります。
これらはすべて、ビットコインからハードフォークした暗号資産(仮想通貨)です。
今回は、ビットコインからハードフォークした暗号資産(仮想通貨)についてご紹介したいと思います。
ハードフォーク(分裂)とは
ハードフォークとは、ブロックチェーンの仕様変更方法の1つで、アップデート前後に「互換性がない」ことが大きな特徴です。つまり、全く新しい別の暗号資産(仮想通貨)が生まれます。
通常は、暗号資産(仮想通貨)のプログラムの弱い部分を強化することを目的として行われたり、利用者が増加することによって処理速度が遅くなる場合がありますが、それを防ぐためにハードフォークが行われます。
これに対して、内容を書き換えても以前の仕様が使える方法のことをソフトフォークといいます。
ソフトフォークの特徴としては、既存のブロックチェーンと新たなブロックチェーンには互換性があります。
ソフトフォークでは、暗号資産(仮想通貨)自体が分裂するようなことはなく、システムやトレーダーにも大きな混乱を与えません。
そのため、ハードフォークとは異なり、トレーダーが知らない間にもソフトフォークはさまざまな暗号資産(仮想通貨)で頻繁に行われています。
ビットコイン(BTC)からハードフォークした暗号資産(仮想通貨)
これまで、ビットコインでは何度もハードフォークが行われ、いろいろな暗号資産(仮想通貨)が生み出されてきました。
ビットコインのハードフォークにより誕生した暗号資産(仮想通貨)をご紹介します。
ビットコインキャッシュ(BCH)
ビットコインキャッシュ(Bitcoin Cash)とは、2017年8月にビットコインのハードフォークにより誕生した暗号資産(仮想通貨)です。
ハードフォークは、機能の改善を目的として行われるアップデートのことです。ハードフォークでは、過去に使っていたネットワークから、新しい別のネットワークに移行します。
ビットコインには、スケーラビリティ問題(取引者数の増加に伴って、取引データがブロック内に格納しきれなくなり、送金遅延が発生してしまう)という大きな課題がありました。この問題を解決するために誕生したのがビットコインキャッシュです。
ビットコインキャッシュの基本的な仕様はビットコインとほぼ同じですが、大きな特徴は「ブロックサイズが大きい」「マイニングの難易度が調整できる」ことです。
ブロックサイズとは、取引を記録・収納するための、1ブロックあたりの容量のことです。ビットコインが1MBに対して、ビットコインキャッシュは8MBです。
つまり、ビットコインの約8倍の量の取引を処理することが可能です。さらに、2018年5月のハードフォークにより、32MBまでブロックサイズが拡充されました。
また、ビットコインキャッシュには「マイニング難易度調節機能」があります。マイニングの難易度を調節することができることで、マイナーが積極的に取引承認を行うようになり、承認速度が向上します。
なお、ビットコインキャッシュは、開発者コミュニティ内における対立により、2018年にさらにハードフォークを行い、「ビットコインキャッシュABC」と「ビットコインSV」の2つに分裂しました。
ビットコインゴールド(BTG)
ビットコインゴールド(Bitcoin Gold)は、2017年11月にビットコインからハードフォークした暗号資産(仮想通貨)です。
ビットコインのマイニングには、ASICという専用の機材を利用すると有利なため、個人がマイニングに参加することが難しい状態です。
ビットコインゴールドでは、ビットコインのアルゴリズム(SHA-256)ではなく、Equihash(エクイハッシュ)というアルゴリズムを採用することで、GPU(グラフィックスカード、画像処理向けコンピューター演算装置)によるマイニングが可能です。
これにより、ビットコインのような特別な演算機能は必要なくなるため、家庭用のパソコンを使ってマイニングができるので、多くの人が平等にマイニングを行うことができます。
ビットコインダイヤモンド(BCD)
ビットコインダイヤモンド(Bitcoin Diamond)は2017年11月、ビットコインキャッシュ(BCH)、ビットコインゴールド(BTG)に続き、3番目にビットコインのハードフォークによって誕生しました。
ビットコインや他のビットコインから派生した通貨とは違う1番のポイントは、匿名性が高いことです。取引金額を暗号化することで、匿名性を確保して安全性を保つことができます。
しかし、匿名性が高いことで、マネーロンダリング(犯罪によって得られたお金などの資金の出どころや受益者の身元を隠すために口座を転々とさせること)などに利用される可能性があります。
犯罪抑制のために規制されることがあれば、需要は減ると思われます。
また、ビットコインの発行上限は2,100万枚ですが、ビットコインダイヤモンド(BCD)は、その10倍の2億1000万枚です。
供給量が多いことで価格が下がるので、気軽に購入することができます。
そして、ビットコインダイヤモンドは、OPTIMIZED X13というマイニングアルゴリズムを採用しています。これはGPUのマイニングに最適化されていて、個人でもGPUを搭載しているパソコンであれば、マイニングを行うことができます。
ブロックサイズは、ビットコインキャッシュ同様、8MB(現在は32MB)で、ビットコインと同じくSegWitにも対応しています。
スーパービットコイン(SBTC)
スーパービットコイン(Super Bitcoin)は、2017年12月にビットコインからハードフォークしました。
基本的な仕様はビットコインとほぼ同じですが、他の暗号資産(仮想通貨)の有益な機能が加えられていて「すべての暗号資産(仮想通貨)の良いとこどりをした暗号資産(仮想通貨)」といえます。
大きな特徴は、「ライトニングネットワーク」「スマートコントラクト」「ゼロ知識証明」です。
ライトニングネットワークは、ネットワークで直接接続されていない者同士が、安全かつ確実にブロックチェーンの外(オフチェーン)で取引を行う技術です。
スマートコントラクトは、契約を自動で実行する仕組みです。あらかじめ、契約の内容と実行されるための条件を定義しておくと、条件が満たされたときに、自動で契約が実行されます。
ゼロ知識証明とは、「取引の詳細を第3者が知らなかったとしても、その取引に不正がないことは証明できる」という暗号技術の概念です。情報の中身を伝えずに、知っていることだけを証明する手法とも言えます。
ブロックサイズは、ビットコインの8倍(8MB)です。ビットコインはSegwitを導入することによってスケーラビリティ問題を解決しようとしましたが、十分に解決されませんでした。
一方、8MBのブロックサイズを採用したスーパービットコインは、問題が大幅に解決されました。
ライトニングビットコイン(LBTC)
ライトニングビットコイン(Lightning Bitcoin)は、2017年12月に誕生しました。
ビットコインは、スケーラビリティ問題や送金スピード問題、リプレイプロテクション対策といった課題を指摘されることが多いですが、ライトニングビットコインは、これらの課題を解決する仕組みを持つ暗号資産(仮想通貨)です。
ライトニングビットコイン(LBTC)は、送金スピードがとても速いという特徴があります。ビットコインが10分掛かる承認作業を、ライトニングビットコインはたった3秒(200倍)で終えるスペックを誇ります。
ブロックサイズは2MB(ビットコインの2倍)に拡張されることで、スケーラビリティ問題が改善されています。
また、ビットコインはリプレイプロテクションが課題として指摘されています。リプレイプロテクションとは、同じ取引データの送信を繰り返すことで、取引を数回実行するような不正行為です。
ライトニングビットコインでは、リプレイプロテクションが実装されたことで、セキュリティ面でもビットコインを上回っていると言えます。
そして、ライトニングビットコイン(LBTC)は、コンセンサスアルゴリズムにDPOS(Delegated Proof Of Stake)と呼ばれるアルゴリズムを採用しています。
DPOSは、ブロックの承認する順番があらかじめ決められている状態でブロック生成をするため、低コストで電力を無駄に消費することなくマイニングが可能となります。
他にも、スマートコントラクト(契約を自動的に実行する仕組み)や、ゼロ知識証明(匿名性・プライバシー強化)といった特徴もあります。
ビットコインプライベート(BTCP)
2018年2月には、ビットコインプライベート(Bitcoin Private)が誕生しました。ビットコインプライベートは、これまでのハードフォークとは違った特徴の暗号資産(仮想通貨)です。
ビットコインプライベートは、ジークラシック(Zclassic/ZCL)の要素を取り入れたハードフォークとしても話題です。ジークラシック(Zclassic)は、ジーキャッシュ(Zcash)からハードフォークしたコインで、2016年11月に公開されています。
高い匿名性が特徴で、送金者と受け取り主の詳細が不明のまま取引の正しさを証明する「ゼロ知識証明」を持つ通貨として有名です。
2つの通貨を合体させるようなスタイルで誕生したビットコインプライベートは、多くのユーザーから注目を集めています。
また、トランザクション速度をそのままに、セキュリティの高い取引を実行できるプラットフォームは魅力的です。
ブロックサイズはビットコインの2倍あり、スケーラビリティ問題に関する配慮も整っています。
さらに、ビットコインプライベートはオープンソースによって運用されていて、すべてのユーザーにシステムの詳細が公開されているのも特徴です。
ビットコインのハードフォーク【まとめ】
この他にも、ビットコインゴッド(GOD)やビットコインシルバー(BTCS)、ビットコインプラチナ(BTP)など、さまざまな種類の暗号資産(仮想通貨)がビットコインのハードフォークにより誕生しました。
しかし、現在でも1番価格が上昇している通貨は、既存のビットコイン(BTC)です。
ビットコインという名前がついていると、「何となく大丈夫そう」と思われる方もいますが、突然サイトが繋がらなくなるなど、詐欺のような通貨もあります。
中には、ハードフォーク前に購入を持ちかけられることもあるようです。価格が上昇しそうな通貨はあっても、必ず儲かる通貨というのは存在しません。
次から次へと新しいプロジェクトが出てきていますが、購入する際には、プロジェクトについてしっかりと情報収集することが重要です。