物件の引き渡しを受けると、家の管理責任は買主に移ります。万一、火事などがあると大変ですので、決済日に、火災保険に加入するのが一般的です。火事は、必ずしも自分の不注意から発生するとは限りません。
隣家からの、もらい火による火事は避けられません。しかし、「失火の責任に関する法律」では、火事を起こした人が軽過失であるならば、損害賠償責任は免除されます。
そのため、火事を起こした人へ請求する損害賠償額だけでは、自分の家を建て直すことは困難になります。
損害保険は、実際の損害額に見合う金額が支払われますので、契約金額が必ずもらえるわけではありません。加入条件や保証金額を、十分に検討してから加入しましょう。
住宅火災保険

火災保険には、建物を対象とするものと、家財を対象とするものの2種類があります。契約形態も、時価額契約と、価格協定特約付契約の2種類があります。補償内容や保険料を、事前によく検討しておきましょう。
火災保険料の算出基準
建物の所在地や構造(外壁、階数、用法、面積)によって料率が変わります。
燃えにくい材料でつくられた家は、火災保険料が安くなります。損害保険金の支払額は、保険金の契約額と損害額の、いずれか低い金額が支払われます。
建物と家財は、別々に契約しますので、1個または1組の価格が30万円を超える貴金属・美術品等は、明記しなければ、保険金は支払われません。
時価額契約
契約書に記載する、全焼時の支払金額は、建物の購入金額と同程度に設定します。
万一のとき、同等の家を再構築するのに必要な金額から、経過年数に伴う減価分を引いた保険金が支払われるので、築年数が古くなれば、保険金の支払金額は少なくなります。
火災により全焼した場合など、保険金だけで再築・復旧は難しくなりますので、時価額契約は、預金などが十分にある場合に加入しましょう。
再調達価格契約
契約書に記載する全焼時の支払金額は、建物を購入したときの金額より増額します。
火災で焼失した家と同等の家を、新たに建築するために必要な金額が支払われるので、築年数に限らず、新築時と同等の家を新しく立て直すことができます。
火災保険の補償内容

損害保険金
火災や落雷、爆発などによって、建物や家財などに生じた直接的な損害について支払われます。
費用保険金
火災などに伴って発生する費用について、支払われます。主な費用保険と利用目的は、下記のとおりです。
| 臨時費用 | 仮住まい費用などの出費に備える |
| 後片付け費用 | 清掃費用などの出費に備える |
| 失火見舞費用 | 自宅の火災などにより、近隣に損害を与えてしまったときに備える |
| 傷害費用 | 火災などの事故により、本人や家族が死亡もしくは重症を負ったときに備える |
| 地震火災費用 | 建物半分以上、家財建物半焼以上または家財全焼となったときに備える ※地震火災費用は、地震保険とは別物です |
| 損害防止費用 | 消火活動で消費した消火剤の再取得費用などに備える |
火災保険の種類
①住宅火災保険
建物と家財を対象とした火災保険で、もっともシンプルな保障内容です(火災、落雷、破裂、爆発などが対象)。
②住宅総合保険
建物と家財を対象とした総合保険で、住宅に限らず、持ち出し家財なども対象とするなど、住宅火災保険より補償内容が充実しています(住宅火災保険の補償内容+衝突、水漏れ、盗難、水災なども対象)。
③長期総合保険
住宅総合保険と、ほぼ同様の損害を補償する積立保険で、保険期間は3年、5年、10年などとなっています。満期返戻金があります。
④団地保険(マンション保険)
団地やマンションなどの居住者を対象とするもので、建物、費用、傷害、賠償責任がセットになっています。建物と費用保険は、住宅総合保険とほぼ同じです。
マンションのような建物は、燃えるものは、室内の装飾や家財が中心です。一戸建てを対象とした保険と違い、家財への補償に重点を置いているので、保険料を安く抑えることができます。
火災保険に付帯できる特約保険
・価格協定保険特約
十分な再建築費用に備える。資材の再調達価格での契約となるので、火災により焼失した家と、同等の家を新たに建築するために必要な金額が支払われます。
・個人賠償責任担保特約
本人または家族が、日常生活において、他人にケガをさせたり、損害を与えることにより、損害賠償責任を負ったときに備える。
・交通傷害担保特約
国内外で、家族の交通事故などによる傷害に備える。
地震保険

地震保険とは、火災保険で補償されない地震・噴火・津波による、火災・損壊・流出などによる損害を補償するもので、火災保険についているケースが多くあります。
補償額が低く、地震保険金で建物を再建築するのは難しいですが、ある程度のまとまった保険金は、万一の際の当面の生活費としても、十分に役立ちます。
①補償範囲
火災保険からも、地震火災費用保険金が支払われますが、補償額が少ないため、十分な地震対策とはいえません。
地震保険は、損害の程度によって、全損時には、最大時価までの補償が受けられますから、火災保険の補填として加入をおススメします。
②保険料の支払い
損害保険は、契約書への署名・押印、保険料の支払いをした日の、夕方4時から責任開始されます。
地震保険は、1年ごと、3年、5年の長期一括と、契約期間を設定することができますが、火災保険のように、何十年も一括で加入することはできません。
③地震保険の問題点
地震が原因で、保険金が支払われる前提条件として、建物の損壊状態が大きく影響します。地震保険とは、建物の主要構造部分が、どの程度の損傷を負ったかによって、保険金の支払いが決まります。
つまり、地震の被害によって、玄関ドアや窓がゆがんで、開閉できなかったり、室内の壁が剥がれ落ちても、主要構造部分でないことから、地震保険金は給付されません。
また、多くの地震保険が、主契約となる火災保険の契約金額に対して、50%までが加入限度額になっています。
地震保険は、保険料が高額な割に、保証金額が低く、給付条件が厳しく、大規模地震の際には、保険金が減額されてしまう可能性もあります。地震保険に対して、過度な期待はしないほうがいいですが、生活を支える一時金として、加入しておくことをおススメします。
地震被害の損傷判断基準
| 建物 | 家財 | |
| 地震による全損 | 主要構造部分である軸組、基礎、屋根、外壁などの損害額が、その建物の時価の50%以上になった場合。 焼失、流失した部分の床面積が、その建物の延べ床面積の70%以上になった場合。 |
損害が時価の80%以上の場合 |
| 地震による半損 | 主要構造部分である軸組、基礎、屋根、外壁などの損害額が、その建物の時価の20%~50%未満の場合。 焼失、流失した部分の床面積が、その建物の延べ床面積の20%~70%未満の場合。 |
損害が時価の30%~80%未満の場合 |
| 地震による一部損 | 主要構造部分である軸組、基礎、屋根、外壁などの損害額が、その建物の時価の3%以上20%未満になった場合。 | 損害が時価の10%~30%未満の場合 |

