投資家は会社を設立すると税金が安くなる?

投資で大きな利益を得ていても「税金の負担が大きすぎる」「他の投資と損益通算したい」など、思うことはありませんか。

少しでも税金を抑えられるよう、法人化を迷っている人もいるのではないでしょうか。

投資における法人化には、多くのメリットがあります。今回は法人設立のメリットやデメリット、法人を設立する際の費用などについて解説しますので、法人化を悩んでいる方は参考にしていただければと思います。

投資家が法人化するメリットとデメリット

法人化のメリット

法人化すると、「有限責任にできる」「信用力があがる」などのメリットがありますが、1番大きいのは「節税対策になる」ことです。

所得の分類

個人が株式投資やFXで稼いだ利益は、譲渡所得や配当所得、雑所得などに分類されます。

法人化して、投資による収益の一部を役員報酬として支給すると、所得区分は給与所得となり、給与所得控除の適用を受けることができます。

節税効果

法人化すると、役員や従業員などに自分の配偶者や子を就かせることによって、報酬を支払うことができます。

すると、個人事業では自分1人に集中していた所得を、「法人の所得」「自分の報酬」「役員や従業員になった家族の報酬」に分散することができるので、税率を低く抑えることが可能になります。

さらに、法人で役員保険に加入する場合の保険料、小規模企業共済・倒産防止共済に加入する場合の掛金などは、必要経費として計上することができ、法人が契約している携帯電話費用なども、必要経費として控除できます。

もちろん、個人で資産運用を行っている場合でも、通信費や勉強のためのセミナーや書籍代は経費として収入から控除することは可能ですが、法人の場合は「経営そのものに要する費用」を、必要経費として計上することができます。

損益通算

個人で投資を行っていると、損益通算ができる範囲が限られています。

たとえば、不動産投資、株式投資、FXを行った場合、それぞれに損益が生じたために損益通算を行おうとしても、異なるジャンルとの損益通算はできません。

しかし、法人口座で取引を行うと、あらゆる所得を損益通算することができます。たとえば、不動産投資と株式投資が黒字でFXが赤字の場合は、FXのマイナス分を不動産と株式投資の収益から控除することが可能となります。

繰越期間が長くなる

個人の場合、株式投資やFXの損失は、翌年から3年間繰り越すことが可能です。ただし、損益通算の規制範囲内で繰越控除が認められるため、株式投資で繰り越した赤字を翌年以降のFXにおける収益から控除することはできません。

法人の場合には、繰越控除の期間は10年まで認められています。また、すべての金融商品の損益を通算してマイナス分を繰り越すことができます。

法人化のデメリット

個人の場合、必要経費や各種控除を差し引いた後の所得がプラスでなければ課税されませんが、法人は赤字であっても、最低7万円の税金を支払う必要があります(法人住民税の均等割)。

また、資産運用会社を設立すると、社会保険の加入義務が生じます。
自分だけのオーナー会社でも、社員が家族だけの会社であっても、報酬を貰っている人がいれば、厚生年金・健康保険など社会保険への加入は必須です(実際には、1人社長の場合、国民年金・国民健康保険のままの会社もあります)。

従業員を雇用すれば、雇用保険・労災保険への加入も必要で、毎月これらの保険料の支払いが必要になります。

そして、会社を経営していると毎事業年度の決算・申告の義務が生じます。
税の専門家である税理士に依頼する必要があり、年間10~50万円程度の税理士報酬がかかります。

さらに、個人で株式投資やFXを行う場合、保有株や持っているポジションに含み益が生じていても、決済して利益を確定しないと課税の対象にはなりませんが、法人の場合は、決済前の含み益も「評価益」として課税対象となります。

決算期に保有している株式や通貨ペアの時価評価額が取得価額を上回っていれば、差額(評価益)に対して税金がかかります。

法人設立の費用や時間

法人を設立することは、そんなに難しくありません。
以前は、資本金が必要でしたが、現在の会社法では資本金1円で設立することが可能です。

ただし、契約手続きで約20万~約30万円程度、法人を維持するために年間100万円程度(売上がゼロの場合)が必要なので、資本金として最低100万円は準備しておきましょう。

また、会社の資産は200万円超であることを法人口座開設の条件とするFX会社などもありますので、法人口座を開設する際には、各業者の規約を確認してください。

法人設立に必要な費用 株式会社 合同会社
定款認証手数料 50,000円
定款謄本費用 2,000円
収入印紙代(電子定款の場合は不要) 40,000円 40,000円
登録免許税 150,000円 60,000円
実印制作費用 5,000円 5,000円
印鑑証明書費用/登記簿謄本費用 1通500円 1通500円
合計 208,000円 66,000円

法人登記に必要な書類
・登記申請書
・定款
・ 発起人の同意書代表取締役を選定したことを証する書面
・代表取締役、取締役、監査役の就任承諾書
・代表取締役の印鑑証明書
・取締役、監査役の本人確認証明書
・設立時取締役及び設立時監査役の調査報告書及びその附属書類
・払込みを証する書面
・資本金の額の計上に関する設立時代表取締役の証明書
・委任状
・印鑑届出書

難しそうに思いますが、会社設立の手続きを自分で行うことは可能です。

ただし、頻雑な手続きもあり、東京都以外の起業家であれば、公証役場、法務局、役所、金融機関などに自ら出向く必要があるため、少なくても2ヵ月程度は必要です。

専門家に手続代行を依頼すれば、費用はかかりますが、手続きに必要な大部分を任せられるので、事業の準備に集中できます。会社設立までの期間も、1ヵ月程度に短縮されます。

さらに、どのような事業内容や社員構成にすれば節税効果が最も大きいかなど、専門家のアドバイスを受けることが可能なので、司法書士や税理士、社会保険労務士などに依頼することをおすすめします。

法人設立はいつ行えばいい?

個人投資家は、どれくらいの利益があれば法人化したほうが良いのでしょうか。
一般的には、年間約800~1,000万円程度の利益があると、法人化をした方が節税効果があると言われています。

これは、日本の所得税が累進課税制度(所得が上がれば税率も上がる)を採用しているため、利益が増えると法人化する方が有利になるからです。

そのため、サラリーマンが副業で少し利益を出したくらいでは、法人を設立する意味がありません。

さらに、法人化すると、毎年の決算の会計処理や所得税、住民税、税理士報酬なども必要になります。法人を設立する場合には「本当に会社にする必要があるのか」をよく考えて設立しましょう。

課税所得金額税率控除額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超330万円以下 10% 97,500円
330万円超695万円以下 20% 427,500円
695万円超900万円以下 23% 636,000円
900万円超1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円超4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

また、同一企業の株式を個人と法人の両方の名義で一定数以上を分割して保有していると、それぞれが配当を受け取ることができる場合があります。

たとえば、1,000株以上を保有していれば10万円の配当が貰える場合、個人or法人のどちらかで2,000株を保有していても受取れる配当は10万円ですが、2,000株を個人と法人が1,000株ずつ分けて保有すれば、10万円ずつの配当を受け取ることができます。

まとめ

法人化する大きなメリットは、「節税効果が高い」ことです。
デメリットとしては、赤字であっても法人住民税を毎年7万円納付しなければなりません。

株式投資や国内のFX業者で稼いだ利益は、譲渡所得or配当所得として区分され、税率は一律20.315%です。暗号資産(仮想通貨)や海外のFX業者を利用した場合には、雑所得となり累進課税が適用されるため、最高税率は55%です。

法人税率は約30%なので、累進課税適用の投資に関しては法人化のメリットが大きいですが、株式投資や国内のFX業者などで稼いでいる場合には、法人化することがデメリットのように感じてしまうかもしれません。

しかし、法人化することによって、節税できる幅が大きく、個人よりも自由に経費を使えるようになります。会社から個人へ非課税でお金を移したり、法人保険を活用することも可能になります。

法人化してからの報酬額の設定や同族役員の有無などによっても異なりますので、明確な線引きはできませんが、毎年800万円~1,000万円以上の利益が続くようであれば、司法書士や税理士に相談してみてはいかがでしょうか。

また、税制改正は毎年行われていますが、法人税は減税、個人に対する所得税や相続税は増税というトレンドになってきています。今後は、法人化したの方が税率が安くなるケースが増えるかもしれません。

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