物件を購入する場合、どのような手順で、どんな手続きが必要なのか、あなたは知っていますか。
また、不動産の購入時には、物件購入代金以外にも、さまざまな諸費用がかかります。
ローンの頭金などで手持ち資金を出し尽くしてしまうと、後々の支払いに困窮することになってしまいますので、注意が必要です。
不動産の購入は、人生で1度という場合がほとんどです。しかし、大きな買い物だからこそ、いい買い物をするために、不動産の購入に関する知識を学んでおくことが大切です。
今回は、中古物件の購入までの流れと諸費用についてご紹介します。これから不動産の購入を検討されている方は、ぜひ参考にしていただければと思います。
物件購入までの流れ

物件の見学をする
興味のある物件が見つかったら、取り扱う不動産会社に連絡をして、実際に物件を見学します。
ポイントは、同じような条件の物件を、複数見学して、比較・検討することです。敷地と道路、隣地との関係、外見などをチェックしましょう。
買付証明書を提出
購入したい物件が決まると、購入申込書や買付申込書などの買付証明書に、必要事項を記入して提出します。
この時に、価格交渉や、特約条件などの希望があれば記載します。仲介業者などは、この書類をもとに、売買条件の交渉や、契約の段取りを決めます。
受渡承諾書を受け取る
受渡承諾書は、売主が買主の申し込みを引き受けたことを確認する書類です。
重要事項説明を受ける
購入する物件の詳細などについて、宅地建物取引士から重要事項の説明を受けます。不都合なことはないか、しっかりチェックしましょう。
売買契約を締結する
物件の内容や、契約条件について承諾したら、売買契約書に署名捺印し、売主に手付金(売買価格の5%~10%程度)を支払います。
ここでようやく売買契約が成立します。
住宅ローンを申し込む
売買契約が成立する前に、仲介業者などが、金融機関に融資の打診をすることもありますが、基本的には、売買契約が成立した後に融資を申し込み、審査が行われます。
残金の決済をする
売買金額から手付金額を差し引いた、売買代金の残金を支払います。住宅ローンを利用する場合は、この前に、金融機関との間で、金銭消費貸借契約を締結します。
残金決済と同時に、司法書士に対して、所有権移転登記申請の手続き、売主との間で固定資産税や、管理費などの精算、仲介業者に対する手数料などを支払います。
不動産投資にかかる諸費用

物件購入代金
物件価格の購入代金では、土地代金分には消費税がかかりませんが、建物代金には消費税が適用されます(建物価格に含まれます)。
売買契約締結時
物件にかかる費用では、売買契約を結ぶ時に添付する印紙代(印紙税)が必要です。なお、令和4年3月31日までに作成された契約書には、軽減税率が適用されます。
| 契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
| 10万円を超え、50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
| 50万円を超え、100万円以下のもの | 1,000円 | 500円 |
| 100万円を超え、500万円以下のもの | 2,000円 | 1,000円 |
| 500万円を超え、1千万円以下のもの | 1万円 | 5,000円 |
| 1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
| 5千万円を超え、1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
| 1億円を超え、5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
| 5億円を超え、10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
| 10億円を超え、50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
| 50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
また、不動産会社などに支払う仲介手数料の上限は、売買価格×3%+6万円+消費税となります。
| 売買価格(税込) | 料率(税抜) |
|---|---|
| 200万円以下の部分 | 5% |
| 200万円超400万円以下の部分 | 4% |
| 400万円超 | 3% |
これらは、法令で定められている上限ですので、実際に支払う金額は、不動産会社との話し合いによって決められます。
ローン契約締結時
ローン契約締結時には、金銭消費貸借契約書に添付する印紙代がかかります。
印紙代は、売買契約締結時と同様に、契約金額によって異なります。
| 目的の額 | 印紙額 |
|---|---|
| ・1万円未満 | 非課税 |
| ・10万円以下 | 200円 |
| ・10万円を超え50万円以下 | 400円 |
| ・50万円を超え100万円以下 | 1千円 |
| ・100万円を超え500万円以下 | 2千円 |
| ・500万円を超え1千万円以下 | 1万円 |
| ・1千万円を超え5千万円以下 | 2万円 |
| ・5千万円を超え1億円以下 | 6万円 |
| ・1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
| ・5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
| ・10億円を超え50億円以下 | 40万円 |
| ・50億円を超えるもの | 60万円 |
| ・契約金額の記載のないもの | 200円 |
ローンを利用した場合、事務手数料として、3万~5万円または融資金額の0.5%~1%を金融機関に支払わなければなりません。ローンの保証料も、金融機関を通じて保証会社に支払うことになります。
決済・引き渡し時
税金関係では、登録免許税も必要となります。
目安としては、固定資産税評価額の1~3%程度です。また、登記を頼んだ司法書士への報酬も必要になります。料金は、司法書士によって異なります。
そのほか、団体信用生命保険や火災保険に加入した場合は、その支払いも考慮します。物件の管理を委託する場合は、管理を請け負う不動産会社に対して、家賃収入から一定の割合で、管理委託費を支払う必要があります。
さらに、不動産を取得することによって、支払う税金があります。毎年支払わなければならない固定資産税、都市計画税と、取得時に収める不動産取得税です。
固定資産税
固定資産税とは、毎年1月1日時点で、登記簿謄本に土地建物所有者として登録されている人(納税義務者)が1年間分を納めなければならない地方税です。
評価額は、土地は公示価格の70%、建物は建築費の50~70%が目安とされています。
原則、3年ごとに評価額の見直しが行われ、納税は一括もしくは年4回にわけて行います。
都市計画税
毎年1月1日時点で、都市計画区域内の土地所有者として登録されている人が、1年間分の納税義務者となる地方税で、固定資産税と一括で納税します。
税額は、固定課税標準額に対して0.3%と定められています。
不動産取得税
不動産を取得したときに収める税金です。納税額は、不動産価格(課税標準額)×税率です。
不動産にかかる税金は、所有している不動産の評価額や物件の数によっても変わります。
節税のメリット

不動産所得は、「総合課税」となるので、給与所得などと合算して納税額が決まります。不動産投資での損失は、課税所得のマイナスになるので、そのぶん、所得税の節税になります。
不動産投資の損失は、物件購入のための諸費用や、物件を視察するための交通費や宿泊費、投資に必要な情報収集のための費用、ローンの支払金利の一部なども含めることが可能です。
また、5棟10室以上の物件を所有していれば、青色申告することができ、青色申告控除や、一定の条件を満たしている場合に限り、青色専従者給与を支払って、経費にすることが認められます。
家族に給与を支払うことによって、所得税の分散効果により、所得税や住民税をおさえられます。
さらに、赤字を3年間にわたり繰り越すことができ、赤字の一部または全部を前年に繰り戻して、税金の還付をうけることも可能になります。
また、不動産投資は、相続税対策としても効果を発揮します。
現金1億円を相続した場合は、評価額1億円に対して相続税が課せられますが、1億円で購入した不動産の相続税は、5,000万円程度になる可能性があります。
税金については、毎年のように法改正が行われますので、対策をする場合には、専門的な知識を持ったプロのアドバイスを受けることをおすすめします。

