退職するときの手続きは、すべて自分でやらなければいけないにもかかわらず、複雑でわかりにくい部分が多いように思います。
そこで、退職時の手続きについて、知っているだけで得する知識をご紹介しますので、これから退職を考えている方は参考にして下さい。
退職願・退職届・辞表は何が違う?
会社を退職しようとする際には、退職願や退職届を提出すると思います。
しかし、厳密にはそれぞれ意味が異なります。
「退職願」は、文字通り退職を願い出る書類ですので、会社が承諾すると、退職が確定します。あくまでも退職の申込なので、提出した時点では、退職は確定ではありません。
それに対して、「退職届」は、本人の意思として退職を決定したので届け出します、という届出書類なので、受理された時点で退職が確定します。
そのため、退職願は、会社が承諾するまでの間は撤回することができますが、退職届は特別な事情がない限り、撤回することはできません。
また、「辞表」という言葉も使われますが、これは役員を辞任する際や、公務員が退職する際に使いますので、一般的には使いません。
退職の申出はいつまでにする?
民法では、退職の14日前までに意思表示が必要となっていますが、さらに「月給制においては月の前半に退職を申し出た場合は当月末、月の後半に申し出た場合は翌月末に退職が成立する」とされています。
社会人のマナーとして、会社の就業規則に記載してある期限を守り、円満退職をして、次のステップに進みましょう。
退職時に会社に返却するもの・会社から受け取るもの
会社に返却するもの
健康保険証は、退職日までしか使用できません。返却しないまま退職日を過ぎて、医療機関にかかった場合は、後で医療費の請求が届くことがあります。
医療費の10割負担はかなり大きな額となるので、退職したら保険証はすぐに返却しましょう。
また、会社から貸与された制服や社員証、パソコンや携帯電話、名刺など、後でトラブルにならないように、会社の人にチェックしてもらいながら、すべて返却しましょう。
会社から受け取るもの
離職票は、失業保険を受給するために、必ず必要となる書類です。会社によっては、本人が請求しないと発行しない会社もあるので、事前に離職票が必要なことを伝えておきましょう。
在職期間が短くて失業保険をもらえない場合や、転職先が決まっている場合でも、前後の会社を通算して失業保険が受給できることもあるので、離職票は必ず交付してもらいましょう。
健康保険・厚生年金保険資格喪失連絡票は、国民健康保険に切り替え手続きをする際に必要となります。また、源泉徴収票は、転職後の会社に提出して、年末調整してもらう際や、確定申告で必要となります。
退職日の違いで社会保険料で損をする?
会社員の場合、退職日が1日違うだけで、社会保険料に大きな差があります。社会保険では、退職日の翌日を資格喪失日と呼び、喪失日がある月の保険料は徴収しないという決まりがあります。
たとえば、10月31日に退職した場合は、資格喪失日は11月1日となり、11月分の社会保険料は徴収されず、10月分までの保険料が徴収されます。
10月30日に退職した場合には、資格喪失日が10月31日になるので、10月分の保険料は徴収されなくなります。
社会保険料は、月単位で計算することになっていて、その基準が資格喪失日になっているので、わかりにくい仕組みになっていますが、退職日が1日違うだけで、数万円の社会保険料が、最後の給料で天引きされるか、されないかが決まります。
会社都合で辞める場合
解雇の場合は、入社後14日以内を除いて、労働基準法で定められた30日以上前の解雇予告か、30日に満たない場合は、不足した日数分の解雇予告手当を支払わなければなりません。
また、解雇日までの年次有給休暇の残余日数は、すべて消化することができます。
会社からは解雇理由証明書を発行してもらい、その理由に納得できない場合は、社会保険労務士や弁護士などの専門家に依頼するか、労働相談窓口で相談してみましょう。
有期雇用契約でありながら、契約期間の途中で契約解除を通告された場合は、高度な必要性がない限り、残余機関の給与も請求できます。
退職時の有休休暇はどこまで認められる?
有休は、労働基準法に定められている労働者の権利なので、雇用関係がある以上、入社日から6ヵ月が経過すれば、有給取得の権利があり、いったん発生した有休休暇は、2年間は消滅することはありません。
社員からの有給取得の請求に対して、会社側が行使できるのは有休の時季変更権のみです。
時季変更権とは、労働者が請求した有休の時期を、業務の都合で変更できる権利ですが、退職日を超えて有休の時期を設定することはできません。
つまり、残った有休を退職日までにすべて請求した場合、変更できる日が無ければ、残った有休をすべて使うことができます。
退職届を提出後に、有休を請求する場合、残った有休が退職日を越えてしまうと、超えた分の有休を請求できないので注意が必要です。
ただし、引き継ぎもしないで、会社の業務遂行に支障をもたらして退職するような場合には、会社によっては懲戒処分の対象となることもありますので、社会人としてのマナーは守りましょう。
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